6 月以降、ヨーロッパ各地で記録的な高温が観測され、中国製エアコンが引っ張りだことなっている。
ここ数年、ヨーロッパのヒートポンプ産業はかつてない技術的飛躍を遂げた。EU のカーボンニュートラル目標、F-Gas 規制の強化、建物の電動化政策が推進力となり、R290(プロパン)冷媒ヒートポンプが従来のガスボイラーや GWP 値の高い冷媒システムに急速に置き換わりつつある。欧州ヒートポンプ協会(EHPA)のデータによると、2025 年末時点でヨーロッパのヒートポンプ累計設置台数は 2500 万台を突破し、業務用ヒートポンプと高温ヒートポンプ市場は引き続き急成長を維持している。
だがヒートポンプメーカーにとって、R290 の普及は冷媒の変更だけでなく、インバータ制御システム全体に新たな課題をもたらす。その中で、これまで注目されてこなかった部品の一つが、システムの効率・信頼性・制御性能を左右する重要な変数となりつつある —— それが三相電流検出だ。

空気熱源ヒートポンプ室外機
従来のエアコンシステムと比較し、R290 ヒートポンプには代表的な特徴が複数存在する。
ヨーロッパの空気熱源ヒートポンプを例に挙げると、動作環境は以下の範囲をカバーする。
同時に、現代のヒートポンプ圧縮機には永久磁石同期モータ(PMSM)とインバータ制御技術が広く採用され、圧縮機の回転数帯域は拡大し続けている。
これは、圧縮機制御システムが広い動作範囲全体で高効率・高安定性を維持し続けなければならないことを意味する。
現在主流のヒートポンプ圧縮機駆動方式には、FOC(界磁ベクトル制御、Field Oriented Control)アルゴリズムが採用されている。
FOC の核心的な目標は、モータの磁束とトルクをリアルタイムで制御することで、以下を実現することだ。
代表的な制御フローは下記の通り。三相電流サンプリング ↓クラーク変換 ↓パーク変換 ↓電流ループ PI 調整 ↓SVPWM 出力 ↓インバータ駆動 ↓PMSM 圧縮機
この制御ラインにおいて、三相電流は最も基礎的かつ重要なフィードバック変数となる。電流測定誤差は直接以下の要素に影響を及ぼす。
従来のエアコン用途では、これらの誤差は経験パラメータによる補償でカバーできるケースが多かった。だが R290 ヒートポンプシステムの広温度・広負荷・長時間連続運転環境下では、誤差の累積効果が顕著に表れるようになった。
現在大半のインバータ駆動システムでは、下記の古典的な方式が採用されている。
この方式は低コスト・実績豊富というメリットを持つ一方、中大容量ヒートポンプシステムでは新たな設計上の課題が浮上している。
SiC MOSFET や高速 IGBT の普及に伴い、インバータの dv/dt が上昇し、強いコモンモードノイズがサンプリング回路にカップリングし、測定精度を低下させる。
ヒートポンプの動作温度幅が大きいため、基板の温度上昇・部品の経年劣化・環境変化によりサンプリングパラメータがドリフトする。
大電流用シャント抵抗自体が追加損失を発生させ、放熱設計の複雑度を高める。
ヨーロッパ市場の安全・EMC 規格強化に伴い、絶縁型サンプリング回路の設計難易度と認証コストが増加している。
そのため、一部の業務用ヒートポンプ、VRF マルチエアコン、高信頼性用途では、絶縁型電流検出方式が再び注目を集めている。
従来のシャント抵抗方式と比較し、絶縁型ホール電流センサには固有の強みが存在する。
一次側と制御回路が物理的に絶縁されており、システムの安全性とノイズ耐性を大幅に向上させる。
大電流サンプリング抵抗が不要なため、温度上昇による測定精度の劣化を抑制できる。
圧縮機の電流変化を高速に追従でき、電流ループの制御性能を高める。
絶縁構造によりコモンモードノイズのカップリングを低減し、システムの EMC 裕度を拡大する。
長時間連続運転・広動作条件で稼働するヒートポンプシステムにおいて、これらのメリットは設計上の価値をますます高めている。

AT4V H00シリーズ電流センサ製品図
中大容量三相インバータシステム向けに芯森電子が開発した AT4V H00 シリーズは、ホール原理に基づく絶縁型電流検出方式を採用し、下記用途に適用可能。
AT4V H00 シリーズの主な仕様・特長は以下の通り。
代表的なヒートポンプ圧縮機駆動システムにおいて、AT4V は三相インバータブリッジ出力側に配置する。
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DCバス ──U相──AT4V ──V相──AT4V──PMSM圧縮機 ──W相──AT4V ↓ ADC ↓ DSP ↓ FOC制御
絶縁測定方式により、高速スイッチング素子が発生させるコモンモード干渉を低減し、電流フィードバックの安定性を向上。広条件下の FOC 制御に信頼性の高いフィードバックデータを供給する。

R290ヒートポンプ インバータ圧縮機駆動制御システムブロック図
過去 10 年間、ヒートポンプ業界の競争軸は下記に置かれていた。
だが R290 冷媒・高温ヒートポンプ・スマートグリッド技術の普及に伴い、競争の焦点は新たな次元へ移りつつある —— 制御システムの精度と安定性だ。
この流れの中で、三相電流検出はシステム全体の部品コスト(BOM)に占める割合は小さいものの、制御アルゴリズムの性能を引き出す鍵となる部品である。
今後の高効率ヒートポンプに求められるのは「圧縮機単体の効率」だけではなく、全動作条件・全温度域・長期運転下における制御ライン全体の高精度な検知能力と言える。