3 年前まで、蓄電 PCS の開発エンジニアが議論の中心にしていたのは、効率、IGBT か SiC の選定、放熱設計といった事柄だった。
だが今では、別の課題が多くの現場で話題に上るようになった ——2000A の大電流をどう計測するか。
単純な計測の問題に聞こえるが、MW 級 PCS の開発に着手した多くのチームが気づくのは、従来のセンサー選定ノウハウが通用しなくなっている現実だ。
理由は単純、PCS 自体が大きく変化したからだ。

1500V システムが主流となり、大容量電池セルによって単機出力が年々引き上げられている。加えて AI データセンター向け蓄電、グリッドフォーミング型蓄電といった新たな用途が登場し、PCS に求められる動的性能への要求も一段と厳しくなった。その結果、以前は数百 A で対応できた計測要件が、今では 1500A、2000A、あるいはそれ以上の領域にまで拡大している。
電流値が大きくなっただけの問題ではない。
真の課題は、設計上の制約条件が大幅に増加したことにある。
昔の電流センサー選定では、まず定格レンジを確認するのが基本だった。
現在ではレンジ自体は容易に満たせる仕様となったが、2000A 通電時に安定した精度を維持できるかどうかが難関となっている。
例を挙げる。システムが 2000A 付近で動作する場合、誤差 1% とは計測値に 20A のズレが生じることを意味する。
一般的な電源装置であれば大きな支障はないかもしれない。
だが蓄電 PCS では、SOC 推定、電力制御、セル均衡制御、EMS の運転計画といったすべての制御ロジックが電流サンプリングの値を基盤に動作する。電流計測の誤差はサンプリング段階で留まらず、段階的に蓄積され、最終的に制御ループ全体に悪影響を及ぼす。
このため多くの PCS メーカーが仕様要求を細かく定めるようになった。単なる「2000A 対応」ではなく、「2000A 全域温度域での精度はいくらか」を問う。単なる「計測可能」ではなく、「数年間連続稼働後も計測特性が安定しているか」を重視する。

もう一つ見落とされがちな課題が動的性能だ。
蓄電システムは電力系統の安定化支援業務を担うケースが増えている。グリッドフォーミング型 PCS、一次周波数調整、高速電力追従制御といった用途に共通する特徴は、電流の変化速度が極めて速い点である。
多くのエンジニアが試運転時に直面するトラブルが、制御アルゴリズム自体は完成しているのに、出力波形の追従が遅れる現象だ。
調査を進めると、DSP の処理速度や制御ロジックに問題があるのではなく、フィードバックされる電流信号自身に遅延が発生してい