電気自動車(EV)の急速な普及に伴い、EVの「ガソリンスタンド」とも言える充電スタンドも急速に発展しています。「5台のEVに対して2基の充電スタンド」という状況で、自宅の駐車スペースに設置する交流(AC)スローチャージャーから、専門的な急速充電ステーションまで様々です。充電スタンドは、EVへの長時間のスローチャージ、または高速・高出力充電の過程で、過電流、短絡、接地(アース)障害などのリスクに直面する可能性があり、これらの危険因子は機器の損傷、火災、さらには人的被害につながる恐れがあります。EVの保有台数が増え続ける中、充電スタンドの安全運転に対する要求はますます高まっています。過電流や短絡などの電気的故障は、充電の安全性を脅かす主要な要因の一つです。本稿では、充電スタンドの過電流リスクについて深く掘り下げ、主流の過電流保護ソリューションを比較することで、充電スタンドの安全確保のための参考情報を提供します。
1. 充電スタンドの動作原理と過電流の危険性
その中核となる機能は、電力系統の電力を安全かつ効率的に車両のバッテリーへ送り届けることです。充電方式の違いにより、主に以下の2種類に分類されます:
交流(AC)スローチャージ
220Vの家庭用電圧を使用し、車載充電器(OBC)を介して電力を変換します。
充電速度は遅く(満充電まで6〜8時間)、夜間の駐車中に使用するのに適しています。
充電プロセスは、低電圧による安全確認後、定電流充電と定電圧充電の2段階で行われます。これは「最初は大口で食べ、次に小口で食べる」ようなインテリジェントな調整に似ています。
直流(DC)急速充電
380Vの高圧直流電力を直接出力し、充電スタンド内部に電力変換モジュールを備えています。
最短30分で80%まで充電可能です。
厳格なハンドシェイクプロトコルによる車両認証が必要であり、バッテリーの状態(電圧、温度など)をリアルタイムで監視し、過充電や熱暴走を防止します。
交流スローチャージであれ直流急速充電であれ、この過程で電流は以下の原因により異常上昇する可能性があります:
バッテリー故障: バッテリー内部の短絡や絶縁劣化による充電電流の急増。
配線の劣化: 充電ケーブルやコネクタの接触不良による局所的な過熱と過電流。
外部短絡: 充電ガンプラグの短絡や誤操作による瞬時大電流。
電力系統の変動: 電圧不安定による充電電流の変動。
一度過電流が発生し、タイミングよく遮断されない場合、以下の事態を引き起こす可能性があります:
機器の損傷: 充電モジュール、ケーブルの焼損。
火災リスク: 高温による周囲の可燃物への引火。
安全上の事故: 感電や爆発の危険性。
2. 充電スタンドが求める過電流保護の要件
理想的な過電流保護ソリューションは、以下の条件を満たす必要があります:
高精度: 微小な電流変化をリアルタイムで監視できること。
高速応答: ミリ秒単位で異常電流を遮断できること。
高信頼性: 極端な温度、湿度、電磁妨害環境下でも安定して動作すること。
小型化: 充電スタンド内部の限られたスペースに適合すること。
高絶縁性: 高電圧環境下での安全基準を満たすこと。
3. 主流の過電流保護ソリューションの比較
現在、充電スタンドでは主に以下の過電流保護ソリューションが採用されており、それぞれ長所と短所があります:
ソリューション | 原理 | 長所 | 短所 | 適用シーン |
ヒューズ | 電流が過大になると溶断する | 低コスト、シンプルで信頼性が高い | 交換が必要、応答が遅い、リアルタイム監視不可 | ローエンド充電スタンド |
サーマルリレー | 電流が過大になると熱素子が変形し、スイッチをトリガー | リセット可能、コスト適正 | 応答が遅い(秒単位)、精度が低い | 産業用機器 |
電磁リレー | 電流が過大になると電磁石が作動し、回路を遮断 | 信頼性が高い、長寿命 | 大型、応答時間がやや長い(~50ms) | ミドルレンジ充電スタンド |
シャント抵抗+オペアンプ | 抵抗による電流サンプリング、オペアンプによる信号増幅 | 高精度、リアルタイム監視可能 | 高電圧に接触が必要、消費電力大、絶縁設計が難しい | 実験室またはハイエンド機器 |
ホールセンサー | 非接触式の磁界検出による電流測定 | 高精度、高速応答、高絶縁性、小型化 | コストがやや高い | ハイエンド充電スタンド、新エネルギー機器 |
指標 | AN3V ホールセンサー | シャント抵抗+オペアンプ | 電磁リレー | ヒューズ/サーマルリレー |
応答時間 | 2.5μs | 100μs~1ms | 50ms | 秒単位 |
精度 | ±1% | ±1% | ±5% | リアルタイム監視不可 |
絶縁性能 | 4.3kV 耐圧 | 追加の絶縁設計が必要 | 高 | 中 |
体積 | 小型 (17.09x13.3mm) | 中 | 大 | 小 |
消費電力 | 低 (6.5mA@3.3V) | 高 | 中 | 無 |
信頼性 | 高 (-40°C~105°C) | 中 | 高 | 低 (交換が必要) |
コスト | 中~高 | 高 | 中 | 低 |
適用シーン | ハイエンド充電スタンド、新エネルギー機器 | 実験室、高精度機器 | ミドルレンジ充電スタンド | ローエンド充電スタンド |
比較分析
ヒューズやサーマルリレーはコストが低い一方で、電流をリアルタイムに監視できず、応答時間も長いため、高出力充電スタンドの要求を満たすのは困難です。
電磁リレーは信頼性が高いものの、大型であり、コンパクトな充電スタンドには適しません。
シャント抵抗+オペアンプ方式は精度が高い反面、高電圧回路に直接接触する必要があり、絶縁設計が複雑で安全リスクが大きいという課題があります。
ホールセンサーは、非接触式測定、ミリ秒単位の応答、高い絶縁性能により、ハイエンド充電スタンドにおける過電流保護の主流技術ソリューションの一つとなっています。
4. AN3Vの充電スタンドへの適用
1 設置方法
AN3Vは充電スタンドのPCBメインボード上に設置されます。
一次側ピン(5,6,7)は母排(バスバー)または幅広の銅箔に接続し、二次側ピン(1,2,3,4)は制御チップに接続します。
電流の方向はセンサーの矢印と一致させ、出力信号が正しくなるようにします。
2 過電流保護ロジック
1.リアルタイム監視: 主電流がPCB上に実装されたAN3Vの一次側ピンを流れ、センサーはこれを電流に比例する差動電圧信号(Vout-Vref)に変換します。
2.信号処理: 差動信号はMCUのADCへ送られ、サンプリングされます。
3.インテリジェントな判断: MCUのアルゴリズムがリアルタイムで電流が正常か、過負荷か、短絡状態かを判断します。
4.高速保護: 異常を検知すると、MCUは直ちに指令を発し、コンタクタを駆動して回路を遮断します。この全プロセスはマイクロ秒単位で完了します。
3 実際の適用事例
実際の適用において、AN3Vホールセンサーは複数の充電スタンドメーカーで採用されており、機器の過電流保護能力を効果的に向上させ、電流異常による故障率や保守コストの低減に貢献しています。
極端な高温環境下においても、AN3Vは±1%以内の測定精度を維持し、充電システムの安全運転に信頼性の高いデータサポートを提供します。
5. AN3V 概要
AN3Vシリーズは、芯森電子(Sinsen Electronics)が全面的にアップグレードした、オープンループ式ホール電流センサー製品群です。電源、太陽光発電(PV)、エネルギー貯蔵(ESS)などの分野における高信頼性、高一致性のニーズを満たすことを目的としています。本シリーズは前世代製品の利点を継承するだけでなく、材料、構造、設計などの多岐にわたって改良と最適化が施されており、同時に高いコストパフォーマンスを兼ね備えており、国産品代替の理想的な選択肢です。
AN3Vシリーズは主にAN3VPB35/PB55などの複数のモデルを含み、80Aから200Aまでの定格測定範囲をカバーします。測定精度を保証するだけでなく、動的測定範囲と信頼性を著しく向上させるとともに、優れた直線性(リニアリティ)を備えています。
製品特性:
ホール原理に基づくオープンループ電流センサー
一次側と二次側の間は絶縁
原材料はUL 94-V0準拠
挿入損失なし
電源電圧: +3.3V
高さ h=8.7mm
準拠規格:
IEC 60664-1:2020
IEC 61800-5-1:2022
IEC 62109-1:2010
パラメータ特性:
電圧出力
電源: +5V/3.3V
定格範囲: ±80~200A
測定範囲: ±80~375A
動作温度範囲: -40~105℃
代表精度: 1%
応答時間: 2.5μs
絶縁耐圧: 3kV
帯域幅: 250kHz
直線性: 0.5%