従来の配電網では、電気は基本的に変電所から需要家へ流れていた。配電変圧器で降圧された後、低圧配電線を通じて村内の住戸、店舗、工場へ送電される。導線には抵抗とリアクタンスが存在するため、電流が流れると線路に電圧降下が生じる。そのため負荷が大きい状況では、変圧器から距離の遠い需要家の電圧は変圧器出口より低くなる傾向があった。
だが農村部や郊外の屋根置き太陽光発電が増えるにつれ、状況は変わり始めている。
一軒あたり数キロワットの太陽光発電では単体の影響は大きくない。しかし、一つの変圧器エリアに数十戸以上の需要家が太陽光発電を設置すると、設備容量が積み上がり状況が変わる。日差しが強い正午に太陽光発電の出力が高水準に達しても、家庭のエアコン、照明、その他電気機器が同時に稼働するとは限らない。発電した電力が地域内の消費電力を上回ると、余剰電力が低圧配電線を通じて外部へ送り出される。
こうなると配電網が対応するのは、従来の一方向給電だけではなくなる。
太陽光発電の出力が大きく負荷が軽い場合、一部線路に逆潮流が発生し、局所的な電圧が上昇する可能性が生まれる。その結果、一見矛盾した現象が発生する。一部の変圧器エリアでは、夜間の電力使用ピーク時ではなく、正午の太陽光発電が大きく出力する時間帯に電圧が高くなりやすくなるのだ。
では電圧はどれほど上昇するのか。どの箇所で電圧が規格値を超えやすいのか。インバーターやその他調整機器が速やかに対応するためには、まずどのような測定データを取得する必要があるのか。

この現象を理解するため、単純な低圧配電線を考える。
従来の給電状況では、電流は変圧器から需要家へ流れ、線路のインピーダンスにより電圧降下が発生するため、需要家側の電圧は電源側より低くなる。ここで需要家側に大量の太陽光発電が接続され、発電電力が地域内の電力需要を上回ると、線路の正味電力の流れが逆転する可能性がある。
この場合、線路インピーダンスによる電圧変化は、従来の電圧降下ではなく電圧上昇として現れ得る。
この問題は特に低圧配電網で注意を要する。多くの高圧線路と比べ、低圧線路は抵抗の割合が大きく、有効電力の変化が電圧に与える影響を無視できない。太陽光発電が長い線路の末端に集中して接続された場合、線路インピーダンス、太陽光発電出力、地域内負荷が相まって、末端の電圧が顕著に上昇することがある。
もちろん逆潮流が発生したからといって、必ず電圧が規格値を超えるわけではない。実際の電圧は線路長や電線の断面積、太陽光発電の接続位置、変圧器の電圧調整方式、インバーターの無効電力調整能力など多くの要因に左右される。逆送電が発生していても電圧が許容範囲内の変圧器エリアもあれば、全体の電力逆送が顕著でなくても局所の連系点で電圧が高くなるケースも存在する。
したがって、単に変圧器エリアの太陽光発電設備容量だけを見て電圧に問題があるか判断してはならない。真に注視すべきは、太陽光発電出力、負荷、線路条件が相互に作用した実際の電圧変化である。
太陽光発電利用者に対する直接的な影響はインバーターの保護動作である。
連系点電圧が適用される保護閾値を超え、かつ規定の持続時間に達すると、インバーターは出力を低下させる、あるいは連系を停止する可能性がある。太陽光発電の出力が高い時間帯では、発電の利用率が低下する要因となる。
局所的な電圧の問題が継続すると、インバーターが停止と再連系を繰り返す場合もある。ただしこれは全ての電圧逸脱事例で発生するわけではなく、インバーターの保護設定、電圧変化の過程、制御方針に依存する。
配電網運用者にとっての課題は、電圧異常の発生箇所、継続時間、それが太陽光発電出力の変化と関連するかを正確に判断することである。
一方向給電が主体だった時代、変圧器エリアの運用分析は負荷の増大、線路電圧降下、供給末端の電圧に主な注目点が置かれていた。分散型電源の接続規模が拡大した現在、従来の低電圧の問題に加え、局所の電圧上昇と双方向潮流による運用上の変化にも対応する必要がある。
これは従来の保護機能が必ずしも無効になるわけではない。保護構成、運用監視、電圧調整方針を、新たな潮流条件に合わせて再検証する必要が生じているのだ。
状況を判断するには、まず信頼できる電圧データが不可欠である。
変圧器エリアの電圧逸脱を検知する測定を行う場合、センサーの単一性能の優秀さよりも、測定チェーン全体が実際の電圧を正確に反映できるかが重要となる。
第一に測定精度である。
電圧が規格値を逸脱しているか判断するには、測定結果を適用される電圧制限値と比較する必要がある。測定誤差が大きいと、実際の電圧が制限値付近に達してもシステムが運転状態を正しく判定できない恐れがある。そのためセンサーの精度、収集回路の誤差、システムの校正方法を考慮する必要があり、センサー単体の精度指標だけを見てはいけない。
第二に電気的絶縁である。
電圧測定は強電回路を扱い、測定信号は端末や制御機器へ送信される。一次側と二次側の絶縁性能は電圧センサーを評価する重要な項目である。ただし、センサー自体に絶縁機能が備わっていても、装置全体が安全要件を自動的に満たすわけではない。外付けの測定抵抗、配線、基板レイアウト、電気的ギャップと沿面距離も設計段階で考慮に入れなければならない。
第三に動的応答である。
太陽光発電の出力は日照により変動し、インバーターの投入・遮断や負荷の変動も電圧変動を引き起こす。速い変化過程を解析する必要がある場合、センサーの応答特性を確認する必要がある。
ただしセンサーの応答が速くても、変圧器エリアのシステムが速やかに調整を完了できるとは限らない。サンプリング周期、データ処理、通信遅延、制御アルゴリズム、実行機器が最終的な応答速度に影響を与える。
規定周期で実効値電圧を監視するだけの用途と、高周波波形や過渡現象を解析する用途では、センサー選定の重点が異なる。
最後に長期安定性である。
変圧器エリアの機器は屋外に長期間設置され、大きな環境温度変化に晒される。センサーのゼロ点ドリフト、ゲイン誤差、収集回路の温度特性は長期の測定結果に影響する。無人で運用される監視装置においては、初期精度だけでなく全温度域での性能と長期的な校正の必要性も考慮しなければならない。
これらの条件が揃って初めて、測定データが運用解析や制御の信頼できる根拠となる。
電圧測定には抵抗分圧、絶縁アンプ、絶縁型電圧センサーなど複数の技術的手法が存在する。それぞれコスト、精度、絶縁方式、消費電力、回路の複雑さに特徴がある。
閉ループホール電圧センサーは、絶縁された電圧測定を実現する手法の一つである。
抵抗分圧器と動作原理が異なる。代表的な原理として、被測定電圧を一次側の測定抵抗で電流に変換し、一次コイルに磁界を発生させる。ホール素子による検出と閉ループ補償により被測定電圧に比例した出力信号を得、一次側と二次側を絶縁した測定を実現する。
この構成により良好な直線性と測定安定性が得られやすいが、実際の性能は個別製品の仕様書に従う必要がある。閉ループ構造だけで精度、温度ドリフト、応答時間、絶縁仕様の各項目が担保されるわけではなく、個別に確認しなければならない。
例えば芯森(CHIPSENSE)VN4Aはホール原理に基づく閉ループ電圧センサーである。機種選定時には測定レンジのほか、出力形式、動的応答、一次‑二次間の絶縁性能に注目する必要がある。
仕様書に記載された主なパラメータは以下の通り。 ‑ 一次側定格電圧実効値:750 V ‑ 最大測定電圧:−1125~+1125 V ‑ 出力定格電流実効値:50 mA ‑ 理論ゲイン:66.66 μA/V ‑ ゲイン誤差:±0.2% ‑ 定格点精度:25℃時 ±0.5%、‑40~+85℃時 ±1% ‑ 非直線性誤差:±0.5% ‑ 追従時間:90 μs ‑ 周波数帯域(‑3 dB):14 kHz ‑ 動作温度:‑40~+85℃ ‑ 一次‑二次間交流絶縁耐圧試験値:8.5 kV RMS、50 Hz、1分
特に注意すべき点として、VN4Aの出力は電流信号であり、直接電圧信号を出力しない。後段には収集インターフェースに合わせたサンプリング回路または電流‑電圧変換回路を実装する必要がある。
一般的な380 V三相システムの場合、線間電圧実効値の正弦波ピーク値は約537 Vとなる。ただしセンサーの適否を判断する際は、このピーク値と最大測定電圧を単純に比較するだけでは不十分である。一次側定格電圧、実際の配線方式、測定抵抗、過渡過電圧、絶縁協調などの条件を確認しなければならない。
VN4Aの仕様書には一次側定格電圧実効値、最大測定電圧、一次‑二次間絶縁耐圧などのパラメータが記載されているが、これらの数値だけで農村部380/220 V配電変圧器エリアの監視装置全てに適用できると証明されるわけではない。具体的な応用に際しては測定構成ごとに評価・検証が必要である。
電圧測定の精度が十分でも、電圧の問題が自動的に解決されるわけではない。
太陽光発電の高出力により変圧器エリアで電圧上昇が発生した場合、運転条件に応じてインバーターの無効電力調整、必要に応じた有効電力出力制限、蓄電池の充放電、変圧器タップ調整などの施策を検討できる。各施策は適用条件、調整能力、導入コストが異なり、対応する制御システムと機器が連携して実行される。
電圧センサーが担うのは測定業務であり、被測定電圧を収集システムが処理可能な信号に変換する。どの需要家の出力を制限するかを判断したり、インバーターや変圧器を直接制御したりはしない。
とはいえ測定工程は軽視できない。測定誤差が大きい、データ更新が遅い、あるいは温度変化により測定値がドリフトすると、その後の解析と制御の根拠が失われてしまう。
話を日差しが最も強い正午に戻そう。
村内の屋根置き太陽光発電が集中的に発電し、地域内の負荷が軽いとき、一部低圧線路に逆潮流と電圧上昇が発生する可能性がある。電圧が規格値を逸脱しているか判断するには、単に設備容量を見たり、特定のセンサーの測定レンジだけで結論を出したりしてはならない。実際の線路条件を踏まえ、測定点を適切に配置し、精度、動的応答、絶縁要件を満たした測定構成を選定する必要がある。
電圧センサーに求められるのは、変圧器エリアの課題を単独で解決する能力ではない。明確な使用条件のもと、持続的に信頼できる電圧測定信号を供給できることである。
電圧を正確に測定できてこそ、その後の監視、解析、調整に信頼できる出発点が得られる。